デザイン GOAT徹底比較
本記事では、「職業デザイナー」だけに絞り、
プロダクト/インダストリアル/グラフィック/情報デザイン/UI・UXまでを横断して
世界の10人を選出。
「創造性・革新性」「デザイン史への影響」「作品の質・完成度」「領域横断性」「現代への持続的影響」
の5項目(各100点、合計500点)でスコアリングし、GOAT(史上最高)を決めます。
ディーター・ラムス(Dieter Rams) — 「Less, but better」を体現したミニマルデザインの原点
主領域:プロダクト・インダストリアルデザイン | 代表:BRAUN製品群、Vitsœ 606 シェルフ
要約
ラムスは、戦後ドイツの家電メーカーBRAUNで数十年にわたりチーフデザイナーを務め、
今なお通用するプロダクトデザインの教科書を作った人物です。
彼の掲げた「よいデザインの10原則」と「Less, but better(より少なく、しかしより良く)」は、
ミニマルな工業製品から今日のUIデザインまで、世界中のデザイナーの共通言語になっています。
代表的な功績・影響
- BRAUNのオーディオ機器・家電で、余分な装飾を徹底的に排除したインダストリアルデザインを確立。
- 「よいデザインの10原則」により、デザインを評価するシンプルなフレームワークを提供。
- Appleなど後続企業のプロダクトデザイン思想に多大な影響(ジョナサン・アイブも公言)。
- ミニマルデザインとユーザビリティを両立させた「静かなデザイン」の象徴的存在。
主要データ(評価のための指標)
| 創造性・革新性 | 98 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 98 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 92 / 100 |
| 領域横断性 | 94 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 96 / 100 |
| 総合 | 478 / 500 |
ジョナサン・アイブ(Sir Jonathan Ive) — 「ポスト・ラムス時代」の情報機器デザインを再定義
主領域:コンシューマー電子機器・UIデザイン | 代表:iMac, iPod, iPhone, iOS UI
要約
Appleのチーフデザインオフィサーとして、iMac・iPod・iPhone・iPadなど
情報機器のアイコン的プロダクトを次々と生み出したデザイナー。
ラムス直系とも言えるミニマルなフォームと、ソフトウェアUIまで含めた統合デザインで、
21世紀の「デジタルプロダクトの標準」を作りました。
代表的な功績・影響
- ハード+ソフト+ブランドコミュニケーションを統合したトータルデザインのモデルを確立。
- スマートフォン以降の情報機器の「白いミニマル」「ガラス+アルミ」の潮流を作った。
- UI/UXデザインにおいてもアイコン・インターフェイスの基調を世界規模で変化させた。
- 消費者にとって「良いデザインは高機能でありながらシンプル」という感覚を常識化。
主要データ
| 創造性・革新性 | 96 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 96 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 92 / 100 |
| 領域横断性 | 94 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 97 / 100 |
| 総合 | 475 / 500 |
チャールズ&レイ・イームズ(Charles & Ray Eames) — 家具から情報デザインまでを横断した「生活と知のデザイナー」
主領域:家具デザイン・空間・展覧会・映像 | 代表:Eames Chair, Powers of Ten
要約
イームズ夫妻は、成型合板の椅子をはじめとする家具で知られつつ、
展覧会・映像・教育プロジェクトまで手がけたマルチディシプリナリーなデザイナーです。
「人間の生活そのもの」を起点に、座る体験・空間・情報の見せ方までを統合的に扱い、
単なるプロダクトではなく「経験としてのデザイン」の先駆けとなりました。
代表的な功績・影響
- 成型合板技術を用いた人間工学的な椅子デザインで家具のスタンダードを更新。
- 映像作品『Powers of Ten』で、スケール感の視覚化=情報デザインの名作を残す。
- 企業展示や教育用展示で、体験型インフォメーションデザインを先取り。
- 「生活・教育・情報」をまたぐ横断的デザインスタジオとして後続のモデルに。
主要データ
| 創造性・革新性 | 95 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 94 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 93 / 100 |
| 領域横断性 | 96 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 93 / 100 |
| 総合 | 471 / 500 |
レイモンド・ローウィ(Raymond Loewy) — 「最も多くの物をデザインした男」
主領域:インダストリアル・コーポレートアイデンティティ | 代表:Shellロゴ、Lucky Strike、鉄道・航空機デザイン
要約
ローウィは、20世紀前半〜中盤にかけて、企業ロゴ・パッケージ・家電・自動車・鉄道・航空機など、
信じられないほど広範な領域を手がけたインダストリアルデザインの草分けです。
「MAYA(Most Advanced Yet Acceptable)」というコンセプトで、
人々が受け入れられるギリギリまで未来的なデザインを推し進めました。
代表的な功績・影響
- ShellやExxonなど、大企業のロゴ・CIを多数デザインし、ブランドデザインのモデルケースを作る。
- 鉄道車両・航空機・自動車など、移動体のストリームライン化(流線形デザイン)を推進。
- 「MAYA」の概念で、革新と大衆性のバランスを取るデザイン戦略を提唱。
- インダストリアル+グラフィック+ブランドを横断した最初期の総合デザイナーの一人。
主要データ
| 創造性・革新性 | 95 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 95 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 92 / 100 |
| 領域横断性 | 92 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 92 / 100 |
| 総合 | 466 / 500 |
ドン・ノーマン(Don Norman) — UX・ヒューマンセンタードデザインの理論的GOAT
主領域:HCI・UX・サービスデザイン理論 | 代表著作:『誰のためのデザイン?』
要約
ノーマンは、プロダクトそのものを大量にデザインした人物ではなく、
「人間中心設計(HCD)」と「UX」という考え方を世界に広めた理論家/実務家です。
ドアノブからコンピュータインターフェイスに至るまで、
「人はなぜ誤操作するのか」「どうすれば直感的に理解できるか」を体系化し、
UI/UXデザイナーの教科書のような存在になりました。
代表的な功績・影響
- 『誰のためのデザイン?(The Design of Everyday Things)』で日常製品のUX分析を普及。
- 「アフォーダンス」「シグニファイア」など、UI/UXの基本概念を普及させる。
- Appleをはじめとした企業のデザイン戦略に理論的基盤を提供。
- サービスデザイン・インタラクションデザインにおける人間中心設計の世界標準化に貢献。
主要データ
| 創造性・革新性 | 92 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 95 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 85 / 100 |
| 領域横断性 | 90 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 95 / 100 |
| 総合 | 457 / 500 |
マッシモ・ヴィネッリ(Massimo Vignelli) — 「デザインは一生使える」を証明した情報・グラフィックの巨匠
主領域:グラフィック・情報デザイン | 代表:ニューヨーク地下鉄路線図、企業CI
要約
ヴィネッリは、「どんなものでも、もしよくデザインされていれば、一生持つ」と語ったグラフィックの巨匠です。
ニューヨーク地下鉄の路線図や、数多くの企業ロゴ・サイン計画で、
情報を整理し、タイポグラフィとグリッドで「迷わない世界」を作ることに徹しました。
代表的な功績・影響
- NY地下鉄マップなど、情報の可視化におけるグリッドと色彩システムの模範を提示。
- Helveticaなど少数フォントに徹した、ミニマルなタイポグラフィ戦略を実践。
- 企業CI・サイン計画で、ブランドと空間を一体で設計する方法論を確立。
- 現代のUIデザインにおけるグリッドレイアウトやアイコン体系にも間接的に影響。
主要データ
| 創造性・革新性 | 93 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 93 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 88 / 100 |
| 領域横断性 | 88 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 92 / 100 |
| 総合 | 454 / 500 |
ポール・ランド(Paul Rand) — ロゴデザインを「ビジネスの言語」に変えた男
主領域:グラフィック・ロゴ・CI | 代表:IBM, UPS, ABC ロゴ
要約
ランドは、IBMやUPS、ABCなどのロゴで知られるグラフィックデザイナーで、
ロゴを単なる「マーク」ではなく、企業の人格とストーリーを伝えるシステムとして捉え直しました。
クリーンで分かりやすい形の中にユーモアと概念を込めるスタイルは、
企業ロゴデザインの「基本形」を作ったと言っても過言ではありません。
代表的な功績・影響
- IBMロゴなどで、タイポグラフィをベースにした強力な企業アイデンティティを構築。
- ロゴガイドラインやCIマニュアルを通じて、ブランド運用の「仕組み」をデザイン。
- シンプルな図形と文字で、複雑なブランドストーリーを伝える方法を確立。
- 現在のスタートアップ〜大企業まで続くロゴデザイン文化のひな型を作った。
主要データ
| 創造性・革新性 | 92 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 92 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 87 / 100 |
| 領域横断性 | 86 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 90 / 100 |
| 総合 | 447 / 500 |
原研哉(Kenya Hara) — 「空白」と「余白」を世界に輸出した日本のデザイン思想家
主領域:グラフィック・空間・ブランドディレクション | 代表:無印良品アートディレクション
要約
原研哉は、無印良品のアートディレクターとして世界的に知られる日本のデザイナーです。
日本的な「空白」「余白」「簡素」といった感性を、ポスター・書籍・空間・ブランド体験に落とし込み、
それを世界の共通語として翻訳する役割を果たしました。
代表的な功績・影響
- 無印良品のブランドイメージを「何もないことの豊かさ」として世界展開。
- 展覧会や書籍(『デザインのデザイン』など)で、日本的美学を理論として整理。
- パッケージ・広告・空間を一貫したトーンで統合するアートディレクションを実践。
- ミニマルデザイン=西洋の機能主義、というイメージに対して東洋的オルタナを提示。
主要データ
| 創造性・革新性 | 90 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 90 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 84 / 100 |
| 領域横断性 | 86 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 92 / 100 |
| 総合 | 442 / 500 |
スーザン・ケア(Susan Kare) — GUIアイコンの「ビジュアル語彙」を発明したUIデザイナー
主領域:ピクセルアイコン・GUI・フォント | 代表:初代Macのアイコン・Chicagoフォント
要約
スーザン・ケアは、初代Macintoshのアイコンやシステムフォントを手がけたデザイナーで、
今日のGUIの「見え方」の多くは彼女の仕事にルーツがあります。
ドットの制約が厳しい時代に、誰もが一目で意味を理解できるアイコンとフォントを作り出し、
コンピュータを専門家だけのものから「生活の道具」へと変えるきっかけになりました。
代表的な功績・影響
- ゴミ箱・ハサミ・フォルダなど、現在も続くGUIアイコンの原型を多数デザイン。
- 可愛らしさと機能性を両立したピクセルアート的表現で、コンピュータへの心理的ハードルを下げた。
- システムフォント「Chicago」などで、画面表示に適したタイポグラフィを提示。
- スマートフォン時代以降のアイコンデザイン文化の源流として高く評価される。
主要データ
| 創造性・革新性 | 92 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 90 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 80 / 100 |
| 領域横断性 | 88 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 90 / 100 |
| 総合 | 440 / 500 |
サウル・バス(Saul Bass) — 映画タイトルとモーショングラフィックスの始祖
主領域:映画タイトル・モーションロゴ・ポスター | 代表:『Vertigo』『Psycho』タイトルシーケンス
要約
サウル・バスは、映画のオープニングタイトルや企業ロゴ・ポスターで、
「動くグラフィックデザイン」を映画産業に持ち込んだデザイナーです。
シンボリックな図形と強烈なタイポグラフィを動かすことで、作品の世界観を数十秒で伝えるスタイルは、
今日のモーショングラフィックスの出発点とされています。
代表的な功績・影響
- 映画タイトルを、単なるクレジット表示から「作品の一部」に引き上げた。
- シンプルな図形・線・色で心理的印象を残す記号的グラフィックスタイルを確立。
- 企業ロゴ(AT&Tなど)に動きの概念を取り入れ、ブランドの「時間的体験」をデザイン。
- 現在の映画・ドラマ・配信サービスにおけるタイトルシーケンス文化の祖。
主要データ
| 創造性・革新性 | 92 / 100 |
|---|---|
| デザイン史への影響 | 90 / 100 |
| 作品の質・完成度 | 86 / 100 |
| 領域横断性 | 84 / 100 |
| 現代への持続的影響 | 88 / 100 |
| 総合 | 440 / 500 |
500点満点 — デザインGOATスコア一覧
※当サイト独自の評価であり、議論のたたき台としての数値です。
| デザイナー | 創造性・革新性 (100) |
デザイン史への影響 (100) |
作品の質・完成度 (100) |
領域横断性 (100) |
現代への持続的影響 (100) |
総合 (500) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ディーター・ラムス | 98 | 98 | 92 | 94 | 96 | 478 |
| ジョナサン・アイブ | 96 | 96 | 92 | 94 | 97 | 475 |
| チャールズ&レイ・イームズ | 95 | 94 | 93 | 96 | 93 | 471 |
| レイモンド・ローウィ | 95 | 95 | 92 | 92 | 92 | 466 |
| ドン・ノーマン | 92 | 95 | 85 | 90 | 95 | 457 |
| マッシモ・ヴィネッリ | 93 | 93 | 88 | 88 | 92 | 454 |
| ポール・ランド | 92 | 92 | 87 | 86 | 90 | 447 |
| 原研哉 | 90 | 90 | 84 | 86 | 92 | 442 |
| スーザン・ケア | 92 | 90 | 80 | 88 | 90 | 440 |
| サウル・バス | 92 | 90 | 86 | 84 | 88 | 440 |
GOAT最終判定
500点満点の総合評価では、
🏆 デザインGOAT(総合) — ディーター・ラムス(478 / 500)
という結果になりました。
- ディーター・ラムスは、物理プロダクトの世界で「よいデザインの原則」をほぼ教科書レベルまで抽象化し、今もなおUI/UXに直接影響し続けている点を最重視。
- ジョナサン・アイブは、その原則を21世紀の情報機器+UIに翻訳し、一般消費者レベルでの「デザイン観」を決定づけた功績が極めて大きい。
- イームズ夫妻は、生活・教育・情報の三領域をまたぐ横断性で、高スコアとなっています。
- ノーマン・ケア・原研哉などは、モノそのもの以上に「考え方・見え方」を変えた影響で評価を底上げしています。
※あくまで「職業デザイナー」に限定し、レオナルド・ダ・ヴィンチなど芸術家寄りの人物は今回は対象外としています。
また、影響力や評価は時代や分野によって変動しうるため、「議論の叩き台」として楽しんでください。
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